“あお”の世界


 目が覚めたら、視界全てが“あお”だった。


 雲一つない快晴の青い空。僕は水面に浮かぶように立っている。
水は本当は透き通った無色透明だけど、ここの水は青い空を映して、蒼く染まっていた。

 何処までも続く青い空と、蒼い水面。空に羽ばたくのは、おとぎ話で幸せを呼ぶ青い鳥。
水面に浮かぶのは、蒼い水連の花。

 僕は水の中に潜った。水面から水底へと進むうちに、視界は淡い蒼から濃い蒼に変わっていく。
水中に泳ぐのは蒼い魚。青を映した蒼をさらに映して青く見える岩には蒼い珊瑚や磯巾着。
淡い水色から、濃藍まで、碧玉色から、紺色まで、色んな“あお”があるけれど、それでも全てが“あお”だった。

 一番下は、藍色のような紺色のような濃く深い蒼。
そこには青く光る水晶のような透き通った石がぽつぽつと落ちていて、その周りだけが、光に照らされて淡く薄い蒼だった。

 少年がいた。あおい少年。
青い髪に藍色の瞳。腰から下は蒼い鱗に覆われた尾鰭になっている。
あおい人魚。

 あおい人魚の周りにはあの光る水晶がいっぱいあって、彼の藍色の瞳や蒼い鱗が、青い光を映してキラキラと青く輝く様がすごく綺麗だ。

 あおい人魚は僕に笑いかけた。
「おいで、一緒に行こう。」
水のように透き通った声。僕は彼の手を取ってまた笑う。

 彼の鱗はよく見ると色んな色のものがあって、ただの一組さえ、同じ“あお”のものはなかった。淡い青、濃い蒼、青緑、蒼紫・・・・・・。
この世界の“あお”を全部映したみたいだった。

 彼に手を引かれ蒼い水の中を泳ぐ。
彼の名前は『葵』というそうだ。名前まであおいんだ。

 僕らが水面に顔を出すと、空は黒っぽい青になっていた。
青白い、細い三日月の投げかける蒼い光が僕らを照らす。
僕らは一緒にあおい星を数えた。
「いーち、にー、さーん・・・・・・きゅうじゅはっち、きゅうじゅきゅっ!!」
全部で99個。あと一つで100個なのにな。

 「僕とずっと一緒にここにいてくれる?」
葵の藍色の瞳に見つめられて僕は頷いた。僕も“あお”になりたかったから。

 僕は“あお”の世界に行った。そして、“あお”になった。



 「ああ、お願い、目を開けて!!嘘でしょう、ねぇ!!死なないで・・・」
母さんの声が聞こえた。泣いていいる気がする。母さんの涙もきっと“あおい”んだろうな。
でも母さん、僕、死んでないよ。“あお”になったんだ。


 “あお”の世界の黝い(あおぐろい)夜空を見上げて。 ほら、僕が見えるでしょう?


あおく輝く、100個目の小さな星が




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