一、壊れた紅


 少年時代の僕は、元々仲の良がすぎる両親に閉口して恋愛不振気味だった。クラスの男子達が夢中だった、エッチな雑誌やビデオなんかにも全然興味はなかったし、いくら美人な女性を見ても興奮することも、顔を赤くすることもなかった。
 その恋愛不振がさらに酷くなったのは高校の時、父が亡くなった後だった。
 父が亡くなってから母は狂い始めた。あれだけ仲が良かったのだ、当然といえば当然かもしれない。
 母は父の面影を持つ僕を父だと思うように・・・いや、思いたがるようになった。
 僕が母を『母さん』と呼ぶと彼女は狂ったように訳のわからないことを喚き散らし、自分の体を血が出るまで掻きむしる。
 そして、それは僕が父と同じように彼女を『紅美さん』と呼ぶまでは治まらなかった。
 僕も最初は日がたてば忘却という助けを得て、母も少しずつ元に戻っていくだろうと、母のいいようにさせていたが、それはますます酷くなるばかりだった。
 母は僕に甘い愛の言葉を求め、抱擁を求め、口付けを求め、そしてついに体に交わりまで求めるようになってしまった。
 もちろん僕はそれを拒んだが、そうすると母はいつも、
「葵さん、もう私を愛してくれないの? 私、もういらないの?」
と涙を流しながら、剃刀を手首に当てたり、父の遺品のネクタイで首を括ろうとしたりした。確か、父がプレゼントしたというネックレスの時もあったと思う。
 僕はそんな母を見て、どうすることもできなくなり、彼女の要求を次々と叶えていった。
 父の言っていた言葉を思い出しながら、彼女に愛の言葉を囁き、抱擁をし、口付けをし、そして・・・体までも繋げてしまったのだ。
 そういうことに興味はなかったものの、幼い頃から両親の性交を間近で見せつけられることのあった僕は、思ったよりも苦労せず母を抱くことができた。
 相手を愛していなくても刺激さえされれば中心は熱を持ち、女性を抱くことができるということを、僕は初めて知った。
 母は嬌声を上げて悦んでいたが、僕は体こそ反応したものの、快感などまったく感じ得なかった。感じていたのかもしれないが、僕にとってそれは快感とは捉え難い苦痛でしかなく、ただ、酷く吐き気がした。



BACK  TOP   NEXT


本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース