第六話 不安


 「何あれ!? どう見たって、ラブラブの恋人同士っていうか、バカップルじゃない!!」
繋いだ手を同じポケットに入れて、寄り添って歩く二人の姿を見た実咲が、憤慨の声を上げる。
 和也は人前でよくやると、呆れ半分に顔を赤くしていたし、羽奈にいたっては声も出せないまま固まっていた。
 「でも、津谷の方は別に進んでって感じはなかったぜ」
「でも、嫌がってるって感じでもなかったじゃない。だいたい恋人がいたら、他の男の手なんて振り払うのが普通でしょ!?」
「おいっ!!」
和也の咎めるような声で、実咲は羽奈が悲しそうな顔をしているのに気付いた。
「ったく、デリカシーねぇのはどっちだよ」
「ごめん、羽奈。どうする? もう後を付けるのやめる?」
実咲の気遣いに羽奈は黙って首を横に振ると、二人の後を追って歩き出す。
 これ以上見たくないという思いはもちろんあったが、それ以上に知りたかった。蒼志と美輪先生の関係を。
 以前恋人同士だったのだろうか? 今でも愛し合っているのだろうか? 自分とのことは気の迷い?
 不安で仕方がなかった。蒼志と美輪先生の間にある空気もそうだが、何より蒼志が何も話してくれなかったことが羽奈を不安にさせていた。
 元々羽奈は蒼志が自分を愛してくれたこと自体、奇跡に近いことだと思っているし、彼を繋ぎ止めておける自信などまったくなかった。
 嫌われたくないと臆病になる羽奈を、いつも柔らかく包んでくれた蒼志。でも、それは本当に愛だったのだろうか? 優しい蒼志は、哀れな自分に同情しただけじゃないだろうか?
 今から思えば、自分に蒼志に愛してもらえるような長所など何一つない。
 羽奈の心の中で疑惑や不安が渦巻いていく。
 蒼志を信じたい気持ちはあったが、それ以上に蒼志に愛されている自分を信じることができなかった。
 「先生・・・蒼志さん・・」
切なげな声で名を呼んでも、彼には届かない。羽奈はただ不安に身を焦がしながら、前を歩く蒼志と美輪先生を見つめていた。



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