第八話 口付け


 フランス料理店を出た後、二人はまっすぐ駅へと向かった。駅で二人は手を離し、美輪先生が蒼志に何事か囁きかける。蒼志はそれに顔を赤くした。
 そして、羽奈の視線の先で美輪先生が蒼志の顎を捉え深く口付けた。蒼志も最初は苦しそうにしていたが、それでも拒みはせず美輪先生に縋り付いていた。
 洋画で恋人同士がするような、深くて長い大人の口付け。羽奈も蒼志とキスをすることはあったが、それは軽く唇を合わせるだけで、こんな風に熱いキスを交わしたことはなかった。
 自分と美輪先生の差を思い知らされたようだった。羽奈と蒼志が交わすのは軽い口付け。所詮は親愛を表す子供騙し。しかし、蒼志と美輪先生の交わしたそれは、大人同士の甘い口付けで、情愛を示す深くて熱いものだった。
 「ちょっと、何あれ!?」
実咲が思わずそう言って、蒼志に抗議をするために飛び出そうとした。和也がそれを慌てて止める。
「何考えてんだ、お前は!? んなことしてどうすんだよっ」
「だって、酷いじゃない!! あの人羽奈の恋人でしょ!?」
「それはわかってるけどな、今、お前が出て行ってどうなるもんでもねぇだろ?」
「・・・わかった。私が間違ってた」
実咲は素直に和也の主張を認め、引き下がる。
 羽奈はというと、そんな二人に気づきもせずにただ固まったまま、蒼志と美輪先生を見つめていた。
 その視線の先で、美輪先生が手を振って蒼志から離れて行き、それを見送った蒼志がその場から立ち去っても、羽奈はただぼんやりと虚空を見つめていた。



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