第十一話 謝罪


 羽奈にとっても見慣れた、蒼志の家のリビングのテーブルを間に挟んで、羽奈と蒼志は向かい合って座っていた。テーブルの上には蒼志の淹れたローズティーが仄かな薔薇の香りと湯気を立ち上らせている。
 そういえば、何故か蒼志はローズティーや薔薇のジャムのロシアンティーなどをよく飲んでいるなと、羽奈は目の前のティーカップを見つめてぼんやりと考えた。あまり現実を見つめたくない気分だったから。
 「羽奈・・・」
羽奈は耳を塞ぎたい思いで目の前のティーカップから立ち上る湯気を見つめた。とても蒼志の方に視線を向けられない。
 「僕はもう、貴方の傍に居てはいけませんか?」
蒼志から別れの言葉なんて聞きたくなくて、羽奈は口を開こうとする蒼志を遮って、自分から切り出した。
「・・・何をいってるんだい?」
「僕、昨日の夜、どうしても気になって先生達の後をこっそりつけて、ずっと見ていたんです。先生は美輪先生と・・・」
それ以上口に出せずに、羽奈が俯く。蒼志は本当に申し訳なさそうに羽奈を見つめた。
「ごめん・・・って言っても仕方のないことだけれど、本当にすまない。君をこんなに傷つけて・・」
「・・・僕、先生が美輪先生を好きでもいいから、恋人じゃなくてもいいから・・・お願いです、傍にいさせてくださいっ」
羽奈の涙がテーブルにぽたぽたとこぼれ落ちていく。弱々しい声が、しかし強く訴えかけてきた。
 蒼志は羽奈の涙を拭おうと手を伸ばしたが、思いとどまって出した手を引っ込める。自分にはその資格がないと思った。
「私には、確かに君の恋人でいる資格がないね・・。君をこんなに傷つけて。でも、私は美輪先生を愛してはいないよ・・・。それに、君と同じことを君に頼みたい。君を傷つけてしまったけれど、恋人でなくても君を傍で守りたいんだ」
蒼志がそっと羽奈の方に手を伸ばした。羽奈が恐る恐るだがその手を取る。
 「美輪先生が好きだから・・・僕は、い、いらないっていう話じゃないんですか?」
震えた言葉に蒼志は彼の手をギュッと握って首を振った。
「じゃあ、僕・・・」
「君がいいのなら、ずっと傍にいて欲しい。恋人でも、そうじゃなくても・・」
「僕・・・恋人がいいっ!!」
羽奈が椅子から立ち上がって、蒼志に抱きついた。蒼志がそれをやんわりと受け止める。
「ごめん・・・本当にごめん」
羽奈は蒼志の胸に顔を埋めたまま首を横に振った。
 蒼志が自分の傍にいてくれるなら、自分を愛してくれるなら、別に誰と何をしてもそんなのは全然許すことが出来る。
 ただ、いらないと言われるのが、傍にいられなくなるのが怖くて仕方がないのだ。
 「先生っ・・・好きです・・愛しています。だから、ここにいさせてください。貴方の傍に」
「羽奈・・・私も愛しているよ。もちろん、君が望むならここに居て欲しい。ただ・・・その前に君に話しておかなければならないことがあるんだ」
蒼志の瞳が切なげに翳った。



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