五、温かな日常


 僕はその日から、学校の帰りに毎日彼女のお茶会にお邪魔するようになった。家に帰るのが嫌だったということもあるが、何より彼女に会いたいと思い、毎日通い詰めた。二人と一匹のお茶会はささやかなものではあったけれど、いつも僕の冷めた心を温かにしてくれた。
 この頃特に寡黙になっていた僕だったが、彼女の前では自然と色んなことを話すことが出来た。僕自身のこと、学校のこと…それから、家のことも話した。彼女は黙って聞いて、辛かったのねと抱きしめてくれた。彼女の体温と仄かに甘い匂いに包まれて、僕の瞳から勝手に涙が溢れ出した。僕の涙が止まるまで、彼女はずっとそうしていてくれた。
 彼女からも色んな話を聞いた。彼女には元々夫と一人息子がいたらしいが、旦那さんは既に他界してしまい、息子さんの方も仕事の関係で海外に住んでいるのだそうだ。旦那さんも元々かなりの資産家で、息子さんの方も海外で成功しているらしく、大きな家で何不自由なく暮らしているが、やはり独り暮らしは寂しいらしい。毎日のお茶会と、薔薇の世話、それに息子さんの息子…つまりお孫さんとのお手紙が毎日の楽しみなのだという。
 「じゃあ、あまり家の外には出ないのですか?」
僕の問いかけに彼女は苦笑と共に頷いた。
「散歩と買い物ぐらいかしら…外に出てもどこに行っていいか分からなくて」
薔薇さんの言葉に僕は少し考えてからようやっと口を開いた。
「あの…よかったら、今度、僕と一緒に出かけませんか? その…薔薇さんの楽しめそうな所を探しておきますから」
緊張して少し早口になってしまったように思う。僕はどうしてか鼓動の早い心臓に戸惑いながら、彼女の顔を見つめ返事を待った。
 彼女は一瞬驚いたように瞳を瞠るが、ふんわりと花が綻ぶような笑みを浮かべて頷いた。
「まぁ、嬉しいわ。場所がどこだって、蒼志さんと一緒だもの。きっと楽しいに決まっているわ」
薔薇さんの化粧の薄い頬が仄かにバラ色に染まる。僕は舞い上がりそうな思いを何とか地に留めながら今度に日曜日にと約束を取り付けた。僕の頭の中に薔薇さんと出かける計画が色々と沸いてくる。つい色々と口が滑りそうだったが、当日のお楽しみということにしておいた。



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