第一話 冷也 〜4〜


 水鈴が生まれ育ったのは、“天界”と呼ばれる冷也達人間の世界とは別の世界だ。
 そこでは科学ではなく“術”と呼ばれる人間から見ると魔法のような不思議な力が文明を支えている。もっとも、天界の者にとっては科学の方が珍しいのだという。
 人間の世界で言う、神様や妖怪、天使や悪魔、魔女などの類は、気紛れに人間界を訪れた天界の者が、語り継がれるうちに少しずつ姿を変えて伝わったものだ。
 天界は、いくつもの“種族”がそれぞれ国や集落を成して別れており、そのうち“四大種族”と呼ばれる、天使、悪魔、竜族、鬼族の国を中心に成り立っていた。水鈴はその内の一つ、竜族の王と王妃の間に生まれた王太子である。
 元々、四大種族のうち、理想主義の天使と現実主義の悪魔、義理人情に厚い竜族と冷酷非情な鬼族は対立関係にあった。だが、八年程前から、人間のことを巡ってそれが激化し始めた。
 悪魔と鬼族は、世の生産にまったく寄与しないばかりか大きな顔で無駄な消費ばかり続けている愚かな人間を、滅ぼしたいと考え、それを実行に移そうとした。だが、自分たちの愚かさに少しずつ気付き始めている人間を見守ってやりたいと考えた天使と竜族がそれを阻止しようとしたのだ。
 四大種族の対立はたちまち全天界に広がり、天界を二つに割った大戦争が始まった。
 両者の戦力は拮抗しており、じきに戦況は膠着。未だ小競り合いは続くものの小休止となっていた。
 そんな折に、天界で最高レベルの実力を持つ鬼族の王が強力な術によって人間に対する攻撃を強行しようとしたのだ。それを防いだのが、彼と同等の実力を持つ、竜族の王と王妃、水鈴の両親だった。
 二人は特殊な儀式を行い、人間界に特殊な封印術を施した。それにより、貴族達は人間界に対する攻撃が不可能になってしまったのだ。
 だが、その封印の儀式は王と王妃の体に大きな負担をかけた。弱っていた二人は鬼族が差し向けた暗殺者に襲撃され、何とか水鈴だけを人間界に逃がした。二人がどうなったかは水鈴にはわからないが、あの状況では恐らく生きてはいないだろうと考えていた。
 二人が死ねば、封印が解ける。鬼族はそう考えていたのだろうが、実は封印の鍵を握るのは水鈴だ。だからこそ両親は水鈴だけを人間界に逃がしたのだった。



BACK   TOP   NEXT


本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース