第二話 学校 〜2〜


 「水鈴っ。何やってんだ、お前?」
元気の良い大きな声でそう問われて水鈴は、読んでいた教科書から顔を上げた。
「勉強だ。次は国語で漢字の小テストがあるであろう?」
真面目な顔でそういう水鈴に萩野連斗はつまらなさそうな顔を向ける。
「お前って真面目だよな。別に小テストなんて白紙で出しても全然いいと思うけどな」
そう言って癖のある黒髪を無意識に引っ掻き回す連斗に、水鈴は苦笑する。
「私は外国から来たせいもあって、勉強が遅れているから」
「しょーがねーな。お前一人じゃ寂しいだろうから、俺も付き合ってやるよ」
そう言って、連斗がドカリと隣の椅子に腰を掛けて教科書を開く。
 「ありがとう、連斗」
素直にそう言う水鈴に、連斗は少し紅くなった顔を教科書の後ろに隠した。
 水鈴が中学校に通い始めてから、約一週間が過ぎた。多少の不慣れや学力不足は外国から来たと誤魔化し、なんとか馴染んできている。
 友人も出来た。一番最初に友達になったのが、彼、萩野連斗である。
 少し世間知らずだが真面目な水鈴と、どこから見ても不良で問題児の連斗は、一見妙な組み合わせで教師達の中には水鈴への悪影響を心配する声もあるが、彼ら自身はお互い気が合うと感じていた。
 最初に出会ったときは、風紀違反で教師達に追いかけられている連斗が、ちょうど水鈴がいた傍の、教壇の下に隠れた時だった。
『適当に誤魔化してくれ』
と小声で伝えてくる連斗に、水鈴は追い掛けてきた教師達を必死で誤魔化そうとしたのだが、口調はどもるは視線は泳ぐはで、結局連斗は生徒指導室に連行されていった。
 心配で追い掛け、うまく誤魔化せなかったことを古風な口調で真剣に謝る水鈴に、連斗は大爆笑。
 それからお互いなんとなく一緒にいると居心地が良くて、よく行動を共にしている。
 今のところ教師達の心配は杞憂で、どちらかというと水鈴の影響を受けた連斗が、こうして気紛れに勉強したり、真面目に授業を受けたりするようになった。
 「連斗、その席の持ち主が困っておる。私の席に座るがよい」
そう言って立ち上がる水鈴に、連斗が後ろを振り返ると気弱そうな女子が、怯えたように自分を見ていた。短く舌打ちしてそこを立ち上がり、水鈴の席に腰を掛ける。
 水鈴の方はと言うと、多少お行儀悪く机に腰掛けた。
「すまない、連斗も悪気があったわけではないのだ」
真面目に詫びる水鈴に、怯えていた女子の表情も多少和らぎ、席について彼らと同じように漢字の勉強を始めたが、連斗の方を見ては怯えたように視線を逸らせていた。
 「なあ、水鈴、俺ってそんな怖いか?」
憮然としてそう言う連斗に、水鈴は教科書を閉じて真面目に応じる。
「私は別に怖いとは思わないが、とりあえず舌打ちをしたのはよくなかったと思うぞ。元々彼女の席を勝手に使用したのはそなたであろう?」
「ちぇっ」
「そう落ち込むものでもない。彼女はそなたを知らぬから怖いと思うのだ。私はそなたを知っておるからそうは思わぬ。それでは不満か?」
顔を覗き込んできた水鈴に、連斗は首を振った。
「大満足だ」
そう言った連斗の表情は晴れやかで、それを見た水鈴は整った愛らしい顔に嬉しそうな笑みを浮かべたのだった。



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