第三話 泉 〜5〜


 「私が長椅子で寝る!! そなたの家なのだから、そなたが寝台で寝てくれ」
水鈴の言葉に泉は首を振る。
「いいえ、貴方を寝台で寝かせるなんてできません。お客様なんですから、遠慮する必要なんてないんですよ」
「ある。泊めてもらうのだから、それが当然だ」
「僕が泊まって貰うんです!!」
水鈴と泉はお互い退かずに睨み合った。
 夕食も食べ終わり、お風呂も済まし、寝ようとした時だった。
 泉の家は資産家の息子である冷也の家と違い、普通のアパートだった。当然、客用寝室等あるはずもない。自然と泉が自分がソファで寝るから水鈴はベットを使うようにと提案したのだが、水鈴が頑なにそれを拒み、口論になったのだ。
 水掛け論に嫌気が差した泉が水鈴の頑固さに思わず溜息をつく。自分も同じぐらいに頑固なことは既に棚の上である。もっとも、水鈴のそういう所も泉は愛しくて仕方がないのだが。
 まして着替えがないからと言って自分の貸したブカブカで肩のずれそうな浴衣を着た水鈴では、睨みつけられても可愛すぎて、つい頬が弛みそうになってしまう。
 「君の気持ちはよくわかりました。では・・」
「そうか。わかってくれたのか。では、私が長椅子を借りさせてもらおう」
泉が言い終わるのも待たずに、満足そうに寝室から出ていく水鈴を泉は抱き上げて寝台に押し込んだ。さらに自分も寝台に入り、水鈴を抱き込む。
「こうしましょう。これで問題解決でしょう?」
「だが、それではそなたが狭いであろう?」
「大丈夫ですよ、君と色々する時のことを考えて、少し無理をしてセミダブルを買いましたから。流石にダブルは部屋が狭くて無理でしたけど」
にっこりと微笑んでさりげなく爆弾発言をする泉だが、水鈴には“色々”の内容だけでなく、“ダブル”や“セミダブル”の意味すらわからなかった。
 「僕と一緒に寝るのは嫌ですか?」
まだ戸惑っている水鈴の顔を覗き込み、泉がそう訊ねると、水鈴は首を振った。
「では構いませんね」
泉はそう言って水鈴をさらに抱き寄せる。水鈴も素直に彼に身を任せた。
 「温かいな。十の頃より一人で寝ておったが、人と一緒に寝るというのは温かくてよいものだな」
水鈴がそう言って泉の胸に顔を擦り寄せてくる。両親の安否も知れず、独りで右も左もわからぬ世界に放り出された状況というのが、余計にそう感じさせるのだろう。
 「こうすればもっと温かいですよ」
泉がそう言って、水鈴の浴衣の襟元を大きくはだけさせた。白い肌と二つの美味しそうな桜色の胸の飾りが泉に曝け出されるが、そういう面にはとことん無頓着な水鈴は、不思議そうに泉を見つめるだけだ。
 泉はさらに自分の浴衣の襟元もはだけさせると、水鈴を抱き寄せ、水鈴の胸と自分の胸をくっつけた。お互いの体温や鼓動が直に伝わる。
「本当だ、温かいな」
水鈴はそう言って瞳を閉じる。聞こえてくる泉の鼓動が心地よかった。
「でしょう?」
泉は下心丸出しで、足下もはだけさせてお互いの足を絡める。
「これで足も温かいですね」
などという言葉が白々しい。
 だが、性別がないうえに、王宮に箱入りで育てられた水鈴は、男女間のことや恋愛について殆ど知識がなかった。キスでもされれば少しは何か感じるのだろうが、それより酷いセクハラに関しては、まったく知識がないので、それが恋愛面や男女関係、情欲に絡むことなど、思いつきもしないのだ。
 泉にしても、そう性急にするつもりはなかったのだが、“添え善食わぬは男の恥”というやつで、せっかくのおいしい状況を楽しまない手はなかった。
 二人乱れた姿で体を絡め合って眠る姿は、端から見れば随分と淫らな様ではあるが、幸い寝室の羽毛の分厚い布団の下でのそれを見る者があるわけもなく、当事者達は安らかな眠りについたのだった。



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